この事例の成果
- 目標インプレッション250%達成
- 指名検索数・店頭購買数上昇
- カテゴリーエントリーポイントの発見
株式会社FinTは、アース製薬株式会社様のモンダミンブランドのSNSを起点としたマーケティング支援をさせていただきました。
「ブランド認知度は非常に高いにもかかわらず、自分ごと化がされない」という課題に向き合い、SNSから使用シーンを掘り起こし、購買との相関まで可視化することはできるのか。今回は、2026年春にかけて実施したインフルエンサー施策を通じて、課題の設計から成果・知見までをお伝えします。
本記事では、アース製薬株式会社 新価値創造本部 コミュニケーションデザイン部の塙様、竹本様と、FinT担当プランナーの三船の3名が登場します。
まず、おふたりの担当業務と、モンダミンブランドとして目指している場所を教えてください。
塙様:新価値創造本部 コミュニケーションデザイン部に所属しています。モンダミンとゴキブリ関連製品のプロモーション全般が担当範囲で、SNS運用も行っています。
竹本様:同じくコミュニケーションデザイン部に所属し、モンダミン・モンダミンキッズ・虫よけ剤の商品プロモーションを担当しています。SNS運用のほか、TVCMの進行も手がけています。ブランドとしては、オーラルケアの正しい理解や誰でも手軽に続けられることを広め、心身ともに健康な生活を送れる世界を実現することが目標です。
塙様:オーラルケアブランドは海外発のものが多い中で、日本発のブランドとして、より多くの人に手に取ってもらいたいという想いがあります。2025年には38年ぶりの全面リニューアルを実施し、「いい口で、笑おう。」というテーマのもと、情緒的なコミュニケーション施策を進めました。
今回の施策に取り組む前、どのような課題感をお持ちでしたか?
塙様:大きく2つの課題がありました。1つ目は、日本のマウスウォッシュ市場全体の使用率の低さです。現状、マウスウォッシュを日常的に使っている人は人口の約35%にとどまっています。※
モンダミンは1987年に「日本人のお口に合う、ピリピリしない優しいマウスウォッシュ」として誕生したブランドですが、世間的には「マウスウォッシュ=刺激が強くてピリピリする」という先入観が根強く、日常での使用を想像しにくい状況がありました。我々としても、「マウスウォッシュの効果≠刺激」という訴求につながる対策は日々考えている部分です。
2つ目は、それに伴うCEP(カテゴリーエントリーポイント)の不足です。ブランド認知度は非常に高いにもかかわらず、そもそものマウスウォッシュの使用率が低いこともあり、自分ごと化がされないんですよね。日常のあらゆる場面で「こんな時にはモンダミン」と思い出してもらえるタッチポイントを増やすことが急務でした。
※24年12月 アース製薬自社調査 20〜69歳 n=1000 「口内の健康を維持するためには、歯磨きだけでは不十分である」を7段階聴取。「とてもあてはまる」「あてはまる」「ややあてはまる」に回答した人のうち、歯ブラシもしくは電動ハブラシを使用してて、マウスウォッシュやデンタルフロスを使用していない人 総務省統計局(23年10月1日現在)人口推計を基に試算

アース製薬様からこの課題を聞いて、最初にどんなことを考えましたか?
三船:最初に立てた仮説が「生活者自身も、モンダミンをどんな場面で使うか言語化できていないのではないか」というものでした。
SNS上のモンダミン名での検索だけでなく、歯磨きや類似する悩みなど隣接ワードを分析すると、まだ言葉になっていない使用シーンの断片が浮かんでいることに気づきました。そこで、数千件以上のSNS発話を収集・分析してCEPを抽出し、スコア化・優先順位づけをした上で、選んだCEPに対して分析タグを設置する流れを設計しています。
施策を実施した後に「どの使用シーンが売上に貢献したか」を検証できる構造をあらかじめ組み込んでおくことが、今回最も重要にした点です。「impが伸びました」で終わらせず、事業への貢献をデータで示せる状態を、施策の入口から設計する。それが私たちのアプローチでした。
実際の施策はどのように組み立てていったのですか?
三船:SNS発話から抽出した複数の使用シーンを、「本当にモンダミンが選ばれそうか」という軸で絞り込みました。コミュニティの熱量、市場規模、「マウスウォッシュはピリピリする」という先入観を払拭しやすいかどうかが主な評価軸です。製品ラインナップの豊富さや、医薬部外品としての洗浄力が訴求として刺さるかどうかも判断材料に入っています。
クリエイター選定では、フォロワー数を基準にしませんでした。「そのシーンを自分ごととして語れるか」「そのコミュニティから信頼されているか」を軸に選んでいます。あるシーンについて熱量を持って発信し、ファンから信頼されているクリエイターでなければ、CEPの自然な訴求にはならない。そういう考え方で選定を進めました。
投稿設計では「広告感を排除し、日常にモンダミンが自然に登場する」形を目指しました。ただし、自然にしすぎると商品訴求として機能しなくなります。「ユーザーが見たくなるコンテンツの中に、使用シーンが溶け込んでいる」状態を保つバランスが、最も繊細な部分でした。媒体はTikTok・Instagram・YouTubeをCEPごとに使い分け、投稿後にSNS広告を配信する構成で展開しました。

この提案を聞いたとき、どのような印象でしたか?
竹本様:「これなら、モンダミンの使用シーンが自然に想起できる、マウスウォッシュがピリピリするというイメージを覆し、自分ごと化してもらえる」と強い手応えを感じました。押し付けがましい広告ではなく、ユーザーが見たくなるコンテンツの中に自然な使用シーンが溶け込んでいたからです。私たちが抱えていたCEP不足という課題に対して、的確な処方箋だと直感しました。
塙様:商品視点から使用シーンを創出しがちな通常の施策と異なり、リアルな日常から多角的にシーンを創出していただけて説得力がありました。シーンに関しては我々も悩むことが多かったのですが、今回SNS上の発話をデータ化して優先順位をつけてもらったことも安心感が大きかったです。
また「自然にしすぎると広告として機能しなくなる、広告感を出しすぎると違和感が生まれる」という難しさもあるなかで、バランスの取れた企画だったことも評価しているポイントです。その人に寄り添ったうえで、伝えたいことを伝えることができたと感じています。
実際に取り組んでみて、どのような結果が得られましたか?
三船:インプレッションは目標数値に対して250%を達成しました。指名検索数や店頭購買数に関しても上昇が見られています。実際に施策が店頭購買とどのように結びついているかも確認させていただきましたが、通常の施策よりも効果が見られたのはよい結果だったと考えています。
また今回設定したCEPのうち2つは売上貢献・再現性ともに優れており、次の施策でも拡張を推奨できる結果になりました。複数媒体で実施したことで、POSとの相関が高く出る媒体も特定できたと思っています。
塙様:CEPを増やすという課題に対して、カテゴリーの中での勝ちパターンが見えてきました。媒体に合わせた勝ち筋があることも分かり、各媒体に「この界隈ならこの人」というインフルエンサーがいるという発見も大きかったです。社内では以前から感触として持っていたものの言語化しきれていなかったことが、データによって「やはりそうだった」と確認できたのは、チームとして大きな収穫でした。SNS施策は流動的な面もあるのですが、コンテンツ量も多いなかで施策進行中もこまめに連携していただきながら、都度方向性を調整しつつ進められたことがよかったです。
その他に、この施策を通じて得られた知見はありますか?
三船:今回はCEPごとに動画を制作し、カテゴリーごとに分析タグをつけて実際の売上と照らし合わせることで、どのシーンが貢献したかを明確にしていきました。弊社の独自理論である「IMPの科学」を用いて、SNSの各指標と実売の関連性を可視化し、どのレバーを強く引くべきかが見えてきたのもよかったと思っています。SNS施策はさまざまな数字の跳ね返りがあるなかで、両者が自信を持って「次はこうしよう」と決め切るのが難しい場面もあります。今回は定量的なラーニングとしてまとめてお渡しできたことが、一つの手応えになりました。
そのラーニングを受けて、納得感はいかがでしたか?
塙様:インフルエンサー施策でどのように売上につながるかは、業界全体の永遠のテーマでもあります。インプレッションがこうだったから何なのか、という問いに答えにくいところが続いていましたが、今回は可視化できるデータが手元に残りました。それが次に向けた強みになると感じています。
竹本様:社内でも施策の結果を報告する際に、「エンゲージメントが良かったです」「リーチが伸びました」と言っても、「それって結果どうつながっているの?」となることはもちろんあって。今回は指名検索や購買との関連まで示せるようになったことで、チームとしての情報財産が蓄積でき、社内での説明もしやすくなりました。
三船:IMPの科学はその理論自体が絶対の正解というわけではないと思っています。ただ、施策を実施した私たちとアース製薬様が共通の仮説を持てることが大事だと思っていて、その判断の1つになればよいという気持ちで向き合っていました。

FinTと一緒に仕事をされてきて、他とは違うと感じた点があれば教えてください。
竹本様:まず1点目は「界隈」を捉えるインフルエンサー選定の緻密さです。フォロワー数ではなく、コミュニティの熱量と界隈との親和性を軸に丁寧に選定していただいたことで、オーガニックでも大きく伸びる投稿が生まれました。コメント欄には「〇〇さんがおすすめしていたから買いました」という声も見られました。
2点目は、対応のスピード感です。コンテンツ量が多い中でも確認・何かあった際のご報告・運用が迅速かつ丁寧で、大きなトラブルなく進められたのも良かったです。
3点目は、最新SNSトレンドを踏まえた提案力と多角的な制作アプローチです。「今この媒体がこういうトレンドで強い」という情報をその都度インプットしていただきながら進められました。インフルエンサー施策だけでなく自社動画の制作にも対応いただいたことで、これまでは複数のインフルエンサーを起用しても傾向が見えにくかったものが、今回は比較して勝ちパターンが見えてきたのが大きかったです。
塙様:私からも1点、「感覚で終わらせない」定量分析力です。先ほども出ていたIMPの科学によって、エンゲージメントやインプレッションが指名検索や実際の店頭購買にどう寄与したかが可視化されて、「どのシーンが効果的だったか」まで詳細に分析いただきました。これまでインフルエンサー施策はなんとなく効果があるから続けるもの、という感覚がありましたが、今回の取り組みを通じて「次は、こうしよう」とデータをもとに判断できる状態に変わりました。それをサポートしていただけたのは、かなり強みになったと感じています。

今後、アース製薬様との取り組みをどのように発展させていきたいですか?
三船:SNSで捉えた生活者の声を、オンラインだけでなく事業全体の成長につなげていきたいと考えています。CEPの継続拡張と新しい切り口の探索はもちろん、購買動線の強化にも取り組んでいきます。アース製薬様と積み上げてきた情報財産を、次の施策の起点として一緒に活かしていく。それが次のステップだと考えています。
最後に、今後モンダミンブランドとして目指していきたいことをお聞かせください。
塙様:これまでは「こんな時にはモンダミン」というタッチポイントを増やすため、多様な界隈へ網羅的にアプローチしてきました。今後は今回の施策で見えてきた「特に反応が良かった界隈」にリソースを集中し、徹底的に深掘りしていきます。単なる一発のバズで終わらせるのではなく、特定のコミュニティにモンダミンが深く定着する「面の施策」へ。今回の施策で効果の高かったCEPを起点に、新しいプロジェクトも動いています。
竹本様:今回の施策を通じて見えてきた方向性をもとに、SNSの外側も含めた施策の積み上げを続けていきたいと思っています。点と点がつながっていくような展開をしていきたいです。
本日はありがとうございました!
「IMPの科学」について
「IMPの科学」は、SNSデータと売上データをもとにSNS施策の事業貢献度を可視化する、FinTの独自理論です。インプレッションをはじめとするSNSの各種指標が、指名検索や店頭購買といった実売指標にどのように影響しているかを定量的に分析します。
インフルエンサー施策をはじめとするSNSマーケティングにおいて、「バズった・伸びた」という定性的な評価や感覚で終わらせず、どのレバー(使用シーンや訴求軸)を強く引くべきかを可視化し、売上に直結する打ち手をデータをもとに決定できる状態を創出します。