若年層に向けたマーケティングで意識したいのは、商品の良さを広く伝えることより、若年層が「自分ごと」として受け取れる文脈に商品を置くことです。広告で何度も見せるより、商品と相性の良い界隈で、好感を持って見つけてもらう届け方が成果につながります。
若年層はおすすめに流れてくる投稿で情報と出会っている

いまの若年層は、自分で番組を選ぶより、SNSのおすすめ機能が選んだ投稿を受け身で見て情報と出会っています。テレビが中心だった頃は、限られたチャンネルの中から番組を選び、多くの人が同じ番組を見ていました。いまは一人ひとりに合わせた投稿が流れてくるため、見ているものが人によって違います。
| 年代 | TikTok/YouTube |
|---|---|
| 10代 | 65.7%/95.7% |
| 20代 | 58.7%/97.2% |
| 全体 | 38.0%/88.3% |
2024年の利用率(全体は10〜60代)。出典:総務省「令和7年版 情報通信白書」図表Ⅰ-1-1-5 YouTubeとTikTokの利用率の推移(年代別)(元の調査は総務省「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」)
TikTokやYouTubeショートでは、フォロワーでない人にもおすすめで投稿が届きます。その一方で、興味を持てない投稿は指1本で飛ばされます。若年層は、普段は流れてくる投稿を受け身で見て、気になったものがあったときだけ自分で検索して詳しく調べます。
SNSを開く目的も年齢で変わります。OASIZが15〜29歳の1,201人に行った調査で、SNSを使う主な目的として最も多く挙がったのは、15〜19歳では「暇つぶし」(45.0%)でした。20〜24歳では「情報収集」(41.5%)が最も多くなっています(出典:ネットショップ担当者フォーラム「Z世代の購買行動調査」)。若年層をひとまとまりで捉えず、どこで、どんな気分で情報に触れているかから施策を考える必要があります。
見ているものが人によって違うため、同じものを楽しむ人どうしが小さな集まりをつくり、その中で情報が広がるようになりました。この集まりを「界隈」と呼びます。界隈ごとの消費の傾向は、次の記事で詳しく解説しています。
界隈マーケティング(トライブマーケティング)とは?界隈消費の特徴と事例・進め方界隈マーケティングは、共通の「好き」や価値観でSNS上にゆるくつながる生活者の集まり(界隈)に深く届けて、話題と購買を生む手法です。トライブマーケティングとの関係や界隈消費の特徴、攻める界隈の選び方と進め方を、FinTの支援事例とあわせて解説します。
若年層マーケティングで意識したい5つのポイント

若年層に向けた施策では、届け方・届け先・文脈・中身・場所の5つを意識します。どれも、FinTが若年層向けの支援と自社メディアの運営で、成果を分けると見てきた点です。
1. 広告で見せるより好感を持って見つけてもらう

若年層には、広告で何度も見せるより、好感を持って自分から見つけてもらう届け方が向いています。若年層は企業の発信より、評価の高い個人の投稿を信じて買う傾向があるためです。
博報堂買物研究所とHAKUHODO EC+の「Z世代×ニューコマース調査」では、Z世代(15〜25歳)の51%が「企業が発信する情報よりも、評価が高い個人のSNSの情報を参考にして買うことが多い」と答えました。Y世代は35%、X世代は23%です(出典:ECのミカタ「博報堂買物研究所、Z世代×ニューコマース調査」)。
個人の投稿でも、宣伝が前に出ると見てもらえません。FinTが若年層向けの施策を振り返ると、商品の情報を並べたPR感の強い投稿は「PRっぽい」「本当にいいと思ってる?」と受け止められやすく、日頃の投稿になじむ自然体の発信のほうが受け入れられていました。インフルエンサーに依頼するときは、その人の普段の投稿の雰囲気のまま紹介してもらいます。物語の中で商品が自然に登場するショートドラマも、広告らしさが出にくい手法です。
ショートドラママーケティングとは?活用メリットと企業の導入事例ショートドラママーケティングとは、SNSで配信する短尺ドラマで商品やブランドを自然に届ける手法です。人気の理由や活用メリット、業界別の導入事例、FinTheaterの支援内容までまとめて解説します。
2. 若年層全体ではなく界隈に深く届ける

若年層に向けた施策は、若年層全体に薄く広く届けるより、商品と相性の良い界隈を選んで深く届けるほうが成果につながります。若年層の関心は細かく分かれていて、同じ界隈の中では話題が一気に広がるためです。
界隈とは、同じ趣味や価値観を持つ人どうしのゆるやかな集まりのことです。キャンプ・e-sports・VTuber・イラスト・一人で楽しむソロ活など、関心ごとに無数の界隈があります。先ほどの「Z世代×ニューコマース調査」でも、「趣味や好きなことを深く極めたい」と答えたZ世代は74%にのぼりました(出典:ECのミカタ)。
届けるときは、商品の価値を求めている界隈を見つけ、その界隈の言葉や文化に沿って伝えます。たとえばVTuberのファンは、配信者を囲んでファンどうしもつながり、同じ話題で盛り上がる関係にあります。その界隈で受け入れられた話題は、ファンどうしの会話や投稿を通して広がっていきます。
VTuberマーケティングとは?成果につなげるポイントと成功事例3選VTuberマーケティングは、VTuberの配信や投稿を通して、ファンに商品やサービスを届ける手法です。ミツカン「味ぽん」や日本オーディオ協会「OTOTEN」など、FinTが支援した3つの事例をもとに、成果につながるポイントと進め方を解説します。
3. 商品を自分らしさを表せる文脈に置く

若年層に商品を届けるときは、機能の説明に加えて、その商品を選ぶとどんな自分を表せるか・誰とつながれるかまで描きます。若年層にとって、何を使っているかは自分らしさを表す手段になっているためです。
電通デジタルの調査では、Z世代(15〜24歳)の55.0%が「自分がどのような商品・サービスを利用しているかは、自分らしさを表現する上で重要だと思う」と答えました。「好きな商品やサービスを通して、誰かと繋がることがある」と答えた人も45.7%で、ミレニアル世代(39.5%)を上回っています(出典:電通デジタル「コロナ禍で変化したデジタルネイティブの消費・価値観調査 ‘21」)。
人と同じものを選びたくない気持ちも強く、「Z世代×ニューコマース調査」ではZ世代の42%が「人と被らないブランド・メーカーを選びたい」と答えています(出典:ECのミカタ)。OASIZの調査では、20〜24歳が買うときに最も重視する要素は「ストーリー性・共感できる背景」(46.3%)でした(出典:ネットショップ担当者フォーラム)。商品が生まれた背景や、使う人の物語を一緒に届けると、若年層が自分の言葉で語れる商品になります。
4. 保存してあとで比べたくなる中身にする

若年層に向けた投稿では、その場で買ってもらうことより、保存してもらってあとで比べるときに思い出してもらうことを目指します。若年層は、気になった情報をいったん保存しておき、その中から比べて決めることが多いためです。
電通デジタルの調査は、若年層の買い方を3つの段階に分けています。日常で気になった情報を保存する段階、保存した情報やまとめ情報の中で比べる段階、そして企業の考え方や社会への貢献・若者への理解などの視点で決める段階です。比べる段階では、SNSでの評判も確かめられます。アルティウスリンクの調査では、20〜30代の81.2%が「購入前にSNSでの評価を確認したい」と答えました(出典:Web担当者Forum「購買行動におけるSNS利用動向調査」)。
保存されやすいのは、悩みの解決策・使い方のコツ・比べるときに役立つ情報のように、あとで見返す理由がある投稿です。商品を使った人の投稿(UGC)が増えるほど、比べる段階で目に入る機会も増えます。
5. SNSごとの使われ方に合わせて届け方を変える

| SNS | 若年層の主な使われ方 |
|---|---|
| X | いま起きていることや話題を調べる。気になった投稿はブックマークで残す |
| 友人の近況をストーリーズで知る。カフェやお店、行き先を探す | |
| TikTok | 流行っていることを知る。流れてくる動画を受け身で見る |
| YouTube | 通学や通勤の暇つぶしに見る。長い時間流しながら見ることもある |
同じ若年層でも、SNSごとに開く目的と使い方が違うため、届け方もSNSに合わせて変えます。上の表は、FinTが若年層向けの施策と自社メディアの運営を通して整理した、SNSごとの使われ方です。
たとえば、行き先を探すときに開くInstagramでは保存したくなるお店の情報が、流行を知るために開くTikTokでは最初の数秒で引き込む動画が向いています。1つの素材をすべてのSNSに同じ形で流すのではなく、それぞれのSNSで若年層がしていることに合わせて作り分けます。
若年層マーケティングの進め方

若年層マーケティングは「誰に」「何を」「どうやって」届けるかの順に決めていきます。手法から先に決めると、若年層の誰にも刺さらない施策になりやすいためです。
最初に決めるのは「誰に」です。「20代」のような年齢だけで終わらせず、どの界隈にいて、どんな悩みや欲求を持つ人かまで絞ります。次に、その人たちにとって商品のどの価値が意味を持つか、どんな文脈で語れば自分ごとになるかを決めます。ここまで決めてから、どのSNSで・誰を通して・どんな表現で届けるかを選びます。
施策を外部に依頼する場合は、次の2つを確かめると依頼先の違いが見えてきます。狙う若年層に近い層での実績があるかと、インサイトをどんなデータから捉えているかです。依頼先の比べ方は、次の記事で解説しています。
インフルエンサーマーケティング会社の選び方|5つの比較軸インフルエンサーマーケティング会社(代理店)は、業界近似の実績・キャスティングデータの質・KPI設計力など5つの軸で比較します。依頼前に確認すべき質問と、業界別の実績例をあわせて解説します。
FinTが支援した若年層マーケティングの事例
ここまで説明したポイントと進め方を、FinTが支援した事例で紹介します。若年層に何をしてほしいかによって、選ぶ接点も表現も変わります。自社の目的に近い事例から読むと、施策の組み立て方が分かりやすくなります。
JTB:広告らしさを抑えたショートドラマで、再生回数約130万回

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 課題 | 旅行を考えるとき以外に若年層との接点が少ない。開設したTikTokの再生回数が伸びず、若年層への届け方が分からなかった |
| 施策 | 「学生の卒業旅行」をテーマにした恋愛のショートドラマをTikTokで配信。JTBの宣伝を前面に出さず、「旅行っていいな」と思ってもらえる物語にした。Xではドラマと連動したクイズ形式のリポストキャンペーンを実施 |
| 成果 | ショートドラマの再生回数は約130万回、Xのキャンペーンのリポストは約1.2万件。TikTokには「旅行に行きたくなった」などのコメントが集まった |
ショートドラマとは、SNSで配信する1話数十秒から数分の縦型の連続ドラマです。没入して最後まで見てもらいやすく、広告らしさが薄いため、広告に敏感な若年層にも受け入れられやすい形式です。事例を見る
SMBCコンシューマーファイナンス:先生のキャラクターがXで発信し、約4か月で1万フォロワー

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 課題 | 学生や地域の人に向けて金融経済教育のセミナーを続けてきたが、取り組みが十分に知られていなかった |
| 施策 | 金融セミナーの講師「リテ子さん」というキャラクターを作り、先生の立場からお金の知識を発信するXのアカウントを運用。性格や口調まで細かく設定し、親しみやすさを重視した |
| 成果 | 立ち上げから約4か月で1万フォロワーを達成し、フォロワーの6割近くが10〜20代。キャンペーン後のフォロワーの離脱率は0.87%で、FinTが運用する他のXアカウント(12.41%)を大きく下回った |
「この情報、初めて知りました!」といったリプライや、ユーザーによるキャラクターのファンアートも生まれています。キャラクターは、形のない商品やサービスを扱う企業が、伝えたいことを目に見える形で届ける手段にもなります。事例を見る
日本オーディオ協会「OTOTEN」:VTuberとのコラボで、40歳未満の来場者が前年比231%

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 課題 | オーディオの展示会「OTOTEN」の来場者は60歳以上の男性が多く、40歳未満の若年層が少なかった |
| 施策 | 歌手として活動し、男性のファンが多い音楽系のVTuberを起用。XとYouTubeのライブ配信を組み合わせた施策を実施 |
| 成果 | 40歳未満の来場者は2,124人で前年比231%。来場者全体も6,179人で前年比142%となり、来場者の3人に1人が40歳未満に |
VTuberとは、イラストやCGのキャラクター(アバター)の姿で動画の配信や投稿を行う配信者のことです。FinTでは、ファンからの支持の強さを独自の指標「信仰度」で見ており、VTuberは信仰度が高い傾向があります。数値は、施策を紹介したMarketingNativeの記事によるものです。事例を見る
Sucle×BAGEL&BAGEL:Z世代向けのメディアと商品を開発し、発売初日に完売

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 目的 | Z世代に向けた商品を開発する |
| 施策 | ベーグル専門店のBAGEL&BAGELと、Z世代の女性に向けたメディア「Sucle」がコラボし、Z世代向けの商品を開発。4店舗限定で販売した |
| 成果 | コラボ商品は発売初日に完売 |
Sucleは、FinTが運営するZ世代の女性に向けたメディアです。読者と同じ世代のメディアと組むことで、若年層の感覚を商品づくりに取り入れられます。事例を見る
まとめ
若年層に向けた施策の成果を左右するのは、広告で何度も見せることより、自分ごとにできる文脈に商品を置いて好感を持って見つけてもらうことです。界隈に深く届ける・自分らしさを表せる文脈に置く・保存したくなる中身にする・SNSごとの使われ方に合わせるという残りの4つも、同じ考え方から生まれています。どの施策も、狙う若年層が「誰で、どの界隈にいるか」を決めるところから始まります。
若年層マーケティングの支援会社をお探しの方へ
FinTは累計460社以上のSNSマーケティングの支援実績と、総フォロワー100万人超の自社メディア「Sucle」で培った若年層の知見をもとに、若年層に向けたマーケティングを支援しています。SNSの発話分析によるインサイトの把握から効果測定まで、一気通貫でご相談いただけます。狙う層と指標の設計やSNSの運用、インフルエンサーやVTuberの起用、ショートドラマの制作にも対応しています。
よくある質問
- 若年層とZ世代は同じ意味ですか
- 区切り方が違います。若年層はそのときの年齢で区切った呼び方で、おおむね10代から20代を指します。Z世代は、一般に1990年代後半から2010年代前半に生まれた世代を指す、生まれた年での呼び方です。2026年時点ではZ世代がおおむね10代前半から20代にあたるため、対象はほぼ重なります。
- 若年層に向けた施策では、広告はもう効かないのですか
- 広告だけで届けるのは難しくなっています。博報堂買物研究所の調査では、Z世代の51%が「企業が発信する情報よりも、評価が高い個人のSNSの情報を参考にして買うことが多い」と答えています。広告を使う場合も、インフルエンサーの投稿やショートドラマのように、若年層が好感を持って見られる表現と組み合わせると届きやすくなります。