CEP(カテゴリーエントリーポイント)とは、消費者がある商品カテゴリーを思い浮かべるきっかけになる場面・目的・気分のことです。「仕事の合間に一息つきたいとき」に缶コーヒーを思い浮かべる、といった結びつきを指します。消費者の頭の中で、より多くのCEPと結びついたブランドほど購買の場面で思い出されやすくなるため、CEPは「どの場面でブランドを思い出してもらうか」を設計するための単位として使われています。
この記事では、CEPの意味と具体例、メンタルアベイラビリティとの関係、CEPを施策に活かすポイントを解説し、最後にCEPを元に施策を設計した事例を紹介します。
CEP(カテゴリーエントリーポイント)とは
CEP(Category Entry Point、カテゴリーエントリーポイント)とは、消費者がある商品カテゴリーを思い浮かべるきっかけになる手がかりのことです。時間帯や季節、場所、一緒にいる人、気分、解決したい用事などが手がかりになります。オーストラリアのアレンバーグ・バス研究所(Ehrenberg-Bass Institute for Marketing Science)のジェニ・ロマニウク(Jenni Romaniuk)氏らが提唱した考え方です。

消費者は、きっかけからカテゴリーを思い浮かべ、そのとき思い出したブランドを選びます。そのため、CEPという入り口でブランドが思い出されるかどうかが、選ばれるかどうかを左右します。ブランドの強みからではなく「どんな場面でこのカテゴリーが必要になるか」から考えるので、機能で差がつきにくいカテゴリーでも、思い出してもらう場面を新しく作れます。
CEPの具体例
CEPは、同じ商品カテゴリーでも場面ごとに複数あります。
| 商品カテゴリー | CEPの例 |
|---|---|
| 缶コーヒー | 仕事の合間に一息つきたいとき/朝、眠気を覚ましたいとき/運転中に気分を切り替えたいとき |
| マウスウォッシュ | 人と会う前に口臭が気になったとき/食後に歯みがきできないとき/寝る前のケアを手軽に済ませたいとき |
| 柔軟剤・香りづけ剤 | 疲れて帰宅して気分を変えたいとき/自分の時間をくつろいで過ごしたいとき/特別な日に気分を上げたいとき |
| アイスクリーム | お風呂上がりに体を冷ましたいとき/頑張った自分へのご褒美がほしいとき/友人と集まったとき |
この表は考え方を示すための例です。実際の施策では、自社の商品カテゴリーについて生活者の声からCEPを洗い出します。
CEPとメンタルアベイラビリティの関係
メンタルアベイラビリティとは、購買の場面でブランドが思い出される度合いのことです。アレンバーグ・バス研究所の考え方では、ブランドが多くのCEPと強く結びついているほど、メンタルアベイラビリティは高くなります。

ロマニウク氏とバイロン・シャープ(Byron Sharp)氏の著書『Better Brand Health』では、CEPごとの想起をもとにした指標として次の4つが示されています。
- メンタル・マーケットシェア(Mental Market Share)
- メンタル・ペネトレーション(Mental Penetration)
- ネットワークサイズ(Network Size)
- シェア・オブ・マインド(Share of Mind)
いずれも、認知度だけでは測れない「どの場面で思い出されているか」をCEP単位で把握するための指標です。
CEPを施策に活かす3つのポイント
CEPを施策に活かすときは、洗い出す、絞り込む、CEPごとに分けて設計する、の順で進めます。

1. 切り口とSNS上の発話でCEPを洗い出す
場面を次の7つの切り口で分解すると、抜け漏れを防げます。
| 切り口 | 例 |
|---|---|
| いつ | 時間帯、曜日、季節、ライフイベント |
| どこで | 自宅、職場、移動中、外出先 |
| 誰と・誰のために | ひとり、家族、友人、贈る相手 |
| 何をしながら | 仕事中、家事の最中、くつろいでいるとき |
| 何と一緒に | あわせて使うもの、組み合わせる商品 |
| どんな気分で | 疲れている、気合いを入れたい、落ち着きたい |
| なぜ | 解決したい用事、得たい気持ち |
出した場面が実際にあるかは、SNS上の発話で確かめます。ブランド名だけでなく、カテゴリー名や関連する悩みの言葉まで広げて集めると、まだブランドと結びついていない場面が見えてきます。
2. 場面の大きさとブランドとの結びつけやすさで絞り込む
洗い出したCEPは、自社ブランドが選ばれやすい場面に絞ります。判断の目安は次の3点です。
- その場面に当てはまる生活者の多さ
- その場面について発信している人たちの熱量
- 自社ブランドの強みがその場面でかみ合うか
3. 年齢や属性ではなくCEPごとにコンテンツを分ける
1つの投稿にすべての場面を詰め込まず、CEPごとにコンテンツを分けます。年齢や属性で区切るより、場面で区切るほうが、見た人が「自分にもこの瞬間がある」と気づきやすくなります。インフルエンサー施策ならそのCEPを自分ごととして語れる人を起用し、ショートドラマならCEPごとに役柄を立てます。
CEPを元に施策を設計した事例
CEPを元に施策を設計した事例として、FinTが支援したアース製薬株式会社「モンダミン」のインフルエンサー施策と、花王株式会社「ハミングフレア アロマビーズ」の縦型ショートドラマを紹介します。
アース製薬「モンダミン」:SNS発話から使用シーンを掘り起こしたインフルエンサー施策
アース製薬株式会社のマウスウォッシュブランド「モンダミン」は、ブランド認知度が非常に高い一方で、「こんな時にはモンダミン」と思い出してもらえる日常の場面が足りないことを課題としていました。同社の調査では、マウスウォッシュを日常的に使っている人は人口の約35%にとどまっています(2024年12月 アース製薬自社調査、20〜69歳、n=1,000)。
施策は次の4段階で設計しました。
- SNS発話を集める:モンダミンの名前だけでなく、歯みがきや類似する悩みなどの隣接ワードまで広げて数千件以上を分析
- CEPを選ぶ:コミュニティの熱量、市場規模、「マウスウォッシュはピリピリする」という先入観の崩しやすさでスコア化
- CEPごとに展開:そのシーンを自分ごととして語れるクリエイターを起用し、TikTok・Instagram・YouTubeを使い分け
- 売上と照らし合わせる:CEPごとに分析タグを設置し、インプレッションは目標比250%、指名検索数と店頭購買数も上昇

日用品・生活雑貨(アース製薬):CEPごとのインフルエンサー施策で目標インプレッション250%を達成し、指名検索数・店頭購買数も上昇。事例を見る
花王「ハミングフレア アロマビーズ」:CEPごとに役柄を立てた縦型ショートドラマ

花王株式会社「ハミングフレア アロマビーズ」の縦型ショートドラマ『わたしのキブン応援係、はじめました。』(全3話、2026年10月公開)は、FinTが企画・制作を担当しました。施策の目的は、柔軟剤は使っているものの洗たく用香りづけ剤を使う習慣がない層に、「香りは自分のキブンのために自分で仕込むもの」という新しい捉え方を届けることです(PR TIMES 2026年10月5日)。
施策の設計では、視聴者が商品を思い出す場面を洗い出し、その文脈をそのまま主人公の設定に反映しました。主演の田村保乃さん(櫻坂46)が、CEPごとに異なる3人のキャラクターを一人三役で演じ分ける構成です。年齢や属性でターゲットを割るのではなく、商品が登場する文脈ごとに物語を立てたことで、観た人が「自分にもこの瞬間がある」と気づける形になり、SNS上での話題化に成功しました。
まとめ
CEP(カテゴリーエントリーポイント)とは、消費者がある商品カテゴリーを思い浮かべるきっかけになる場面・目的・気分のことです。多くのCEPとブランドが結びついているほど、購買の場面で思い出されやすくなります。CEPを施策に活かすときは、切り口とSNS上の発話でCEPを洗い出し、場面の大きさとブランドとの結びつけやすさで絞り込み、年齢や属性ではなくCEPごとにコンテンツを分けて設計します。
CEPを起点にしたSNS施策をご検討中の方へ
FinTは、累計460社以上の支援実績をもとに、SNS上の生活者の発話からCEPを洗い出し、インフルエンサー施策やショートドラマでCEPごとにコンテンツを設計し、指名検索や購買への貢献までを検証するSNSマーケティングを支援しています。インフルエンサー施策とショートドラマの支援内容はブランドグロースをご覧ください。ご相談はお問い合わせから受け付けています。
よくある質問
- CEPとペルソナの違いは何ですか
- ペルソナは「誰が買うか」を人物像で描くもの、CEPは「どんな場面で買おうと思うか」を状況で描くものです。同じ人でも場面によって選ぶブランドが変わるため、CEPは年齢や属性で区切ったターゲットよりも、購買のきっかけに近いところで施策を設計できます。
- 1つのブランドでいくつのCEPを狙えばよいですか
- 最初から数を決める必要はありません。洗い出したCEPを、その場面の多さと自社ブランドとの結びつけやすさで評価し、上位のいくつかに絞って施策を出し分けます。施策の結果を見ながら、反応のよかったCEPに予算を寄せ、次に狙うCEPを広げていく進め方が現実的です。
- CEPはSNSマーケティングでどう使えますか
- SNS上の生活者の発話からCEPを洗い出し、CEPごとに投稿やインフルエンサーの起用、ショートドラマの役柄を分けて設計します。CEPごとにコンテンツを分けておくと、どの場面の投稿が指名検索や購買につながったかも検証しやすくなります。